九州ロジスティクス活性化研究会の第8回会合を3月14日(金)にホテルセントラーザ博多にて22名の出席のもとに開催いたしました。
本年度は年間テーマを「ロジスティクス戦略と物流品質」を年間テーマに活動を行いました。物流品質は各社とも重要管理項目として取り組まれており、PDCAサイクルを廻し日々改善を実施されています。ただし、事例の発表とディスカッションを通じて、物流品質管理の課題としてその管理項目やレベルの判断基準は、各社独自基準や取引先の要請によって設定されており、数多くの企業が現状の管理項目や判断基準が妥当なのか、抜け漏れが無いのかと悩んでいることが明らかになりました。
また、物流を取り巻く環境は、景気が回復基調に転じたことと消費税増税を目前とした駆け込み需要により物量が増加している中、昨今のドライバー不足と相俟って混乱の極みの状況にあります。昨年末から物流の潮目が変化していると言われ、一部の物流企業では取引先の荷主企業の選別を始めているとも言われております。
物流は経済活動と国民生活にとって重要な機能であり、社会性の高い活動であります。今後は、荷主企業と物流企業が共に、安全と物流品質管理レベルで評価されるための基準などの仕組みと環境整備が必要不可欠であると再認識しました。
特に、グローバル化において、日本の物流品質管理を海外に展開するためにも、その技術やシステム移転の方法と品質判断基準の早急な確立が求められていると痛感いたしまた。
九州ロジスティクス活性化研究会【3月14日(金)】高田主査コメント
3月14日(金)に開催された本年度最後の九州ロジスティックス活性化研究会では、トヨタ自動車株式会社物流管理部の高松孝行様より、「トヨタのロジスティックスと物流品質管理」というテーマで講演頂きました。
日本のものづくり企業を代表する同社では、グローバル生産が急速に進んでおり、今や総生産台数約900万台に対し、海外生産が6割を越え増加し続けています。当然ながら、ジャストインタイムに代表される『トヨタ生産方式』を支える高品質のSCMシステムを海外でも機能させなければなりません。
例えば中国では、日本と同様のKPIを設定して現地関連企業や人材の育成を試みるものの、物流インフラの質が日本に及ばないため予想外の荷崩れが生じたり、軍事関連施設という位置づけのため鉄道輸送の現場をつぶさに調査することができなかったりと、何かと想定外の問題に悩まされることも多いとのことです。
物流品質向上については、「納期」「コスト」「品質」「環境」の4つの視点でKPIが設定され、PDCAによって日々レベルアップを図ることにより、直近の売上高物流費は3.6%まで低下し、輸送CO2も90年比で32%削減されています。近年では、他社との共同輸送による復荷率向上(空車便が140便/日から120便/日に低下)や、遠隔地輸送の船舶鉄道利用比率の増大(トンキロベースで70%が船舶鉄道輸送)なども進んでいるとのことです。
ものづくり企業のグローバル化に伴い、国内の物流品質を海外でも実現するためのノウハウ移転活動は、いずれの企業でもこれから益々活発化します。しかし、現地の国民性は様々ですので、日本のやり方がそのまま簡単に海外で実現できるはずもありません。「現地に張り付いて、何度も繰り返して植え付けていくほかない」という高松様の言葉に、地に足をつけた活動の重要性と、それを長い社歴の中で実践し、その結果確立された『トヨタ生産方式』の価値の源泉について改めて気付かされる話でした。
(文責 高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)
◆高田 仁 氏
九州ロジスティクス活性化研究会 主査
JILS九州ロジスティクス委員会副委員長
九州大学大学院 経済学研究院 准教授