2012年11月アーカイブ
「物流コスト算定を始めるに当たって、どのような参考書がありますか?」といった問い合わせが良く寄せられます。以下、ランダムに参考文献を記載してみます。
1.旧通産省「物流コスト算定活用マニュアル」 Amazon
1992年に発刊された資料ではありますが、依然としてこの分野の基礎的テキストと言えるものです。残念ながら絶版となっていますが、古書としても多く出回っており、入手するのは難しくありません。物流コストの算定や分類方法が詳細に記述されており、自社において算定基準を作る際の参考とすることができます。本マニュアルを策定した委員会の座長は、早稲田大学名誉教授の西澤脩先生です。
2.中小企業庁「物流コスト算定マニュアル」 経産省サイト
1.のマニュアルが主として大企業を想定した内容となっており、中小企業には導入が難しい面があることから、中小企業を対象とした簡便法として策定されたマニュアルです。
例えば物流担当の社員の人件費、自家倉庫の施設費といった「自家物流費」の実績額を算定するのは容易ではありません。正確に自家倉庫の費用を把握するには、減価償却費のうち、倉庫に関する部分のみを抽出するといった手間が必要となります。本マニュアルでは、このように実績額の算定が難しい項目について、推計的手法を導入し、物流コストのおおよその金額を把握するように工夫されています。
3.河西 健次「すぐ使える実戦物流コスト計算」 Amazon
物流コスト算定の解説書は数多ありますが、本書は読みやすく、実務的にも役立ちます。物流コストの算定は業務改善やコスト削減といった実務への応用を意識して進める必要がありますが、その点、本書の著者は旭硝子で物流コスト算定に長く携わっており、実務的な示唆を得ることができると思います。
4.簿記会計の各種テキスト
物流コストは管理会計上のコストであると言っても、財務会計の仕組みと切り離して理解することは難しいと思われます。また、基礎的な財務会計上の概念を理解することは、物流コストの管理にも役立つと考えられます。特に、会計の知識がまったく無い場合は、簿記3級レベルの簡単なテキストから基礎的な知識を習得していくことが考えられます。
(つづく)
物流コストとは、物流に起因して(関連して)発生するコストであって、輸送費、保管・在庫費、包装費、荷役費、物流管理費といった機能別の観点、支払物流費、自家物流費といった支払形態別の観点、または調達物流費、社内物流費、販売物流費といった領域(物流プロセス)別の観点から分類されることが一般的です。
なお、旧通産省による「物流コスト算定活用マニュアル」では、物流コストとは「有形・無形の物財の供給者から需要者へ至る実物的な流れに要するコストのことであって、具体的には、包装、荷役、輸送、保管及び情報処理の諸活動に要するコストを指している。このような物流コストは、商流コストと並んで、物財の時間的、空間的な価値の創造に貢献するコストを表している」と定義しています。
物流コストは、会社内の様々な場面で発生します。調達のための物流、社内の拠点間の物流、顧客への販売物流などです。企業の財務諸表には、「配送費」といった費用項目が掲載されていることはありますが、これは物流コストの一部に過ぎないことに注意が必要です。
「バルクカーゴ」とは何か(液体は含むか)など、物流の対象となる物資を表す用語の定義は必ずしも明確ではありませんが、JISの用語定義等を踏まえると、おおむね下表のように整理できると考えられます(ただし、実務上の例外は多々存在します)。
ロジスティクスの定義は様々なものがありますが、法的な根拠(工業標準化法)に基づく公的な定義として、JIS(日本工業標準規格)の物流用語の定義が挙げられます。
そのJIS物流用語では、ロジスティクスは「物流の諸機能を高度化し,調達,生産,販売,回収などの分野を統合して,需要と供給の適正化をはかるとともに顧客満足を向上させ,あわせて環境保全及び安全対策をはじめ社会的課題への対応をめざす戦略的な経営管理」と定義しています。
「物流」は、包装、輸送、保管といった諸機能の総合的管理であるのに対し、ロジスティクスは、その「物流」に加え、調達や生産といった分野を管理の対象とする、より上位の統合化を志向した概念であると考えられます。
英語版を作成しております。
部数が限られておりますので、当会主催展示会などで適宜配布させていただいております。