中部物流改善事例発表会2015 発表事例に関するご質問とご回答

昨年11月25日(水)、名古屋にて開催いたしました「中部物流改善事例発表会2015」の発表事例に関しまして、発表会当日の参加者の皆様からのご質問と、発表企業様からのご回答を公開いたします。ご参照くださいますようお願いいたします。

〇発表事例:問題点の要因別検証・確認と結果共有による菓子不良品の削減
〇発表企業:アサヒロジ様

質疑1:
「あめ」が製造され搬送されていたページを見て(page7)後に個装されるのですが、品質面において、個装されるまでにどの様な管理をされているのか?食品なので一旦でも裸?と言うところが気になりました。
回答1:
製造工場にて気密性の高いビニール袋に入れシリカゲルを入れ、運搬専用アパコンに入れられ、専用トラック(保冷車)にて包装センター搬入され、包装室(クリーンルーム)まで外気にあたることなく、包装直前までは、クリーンルーム(温湿度管理された部屋)で保管しております。種類により保管期限も決まっております。

質疑2:
現場改善されている全事業所において、品質も重視されていますが、品質の指標でもあるPPM数値はどのようにしてとらえられていますでしょうか。
回答2:
荷主様の売上個数に対し発生件数にてとらえております

〇発表事例:ピッキング業務のムダ取り改善と安全確保
〇発表企業:アドバンスト・ロジスティックス・ソリューションズ様

質疑1:
現場作業における生産性を高める為に様々な改善が可能であると分かりましたが、基本的に現場は変化を嫌うと耳にします。そこで、調査、効果を約束するプレゼンをするかと思うのですが、その際の伝え方の注意点などありましたらお聞かせください。
回答2:
スタッフ社員側の一方的な活動にならないようにすること。
調査段階で、対象工程のパートさんに対して目的・ねらい等を示す。理解活動伝え方として
1)活動開始時
・ムダ取りして働きやすい職場にする活動であり労働強化のお願いではない。
・活動中は情報を共有して意見吸上げする、等々。
・ビデオ等で作業中の実態を見せて、口頭だけでなく視覚でも伝える。
2)改善実施時
・作業ポイントとか、なぜそうしたのか説明する。
・スタッフ社員が気がつかない「やりずらさ」とか「危険作業」等が、発生してないか意見交換して不具合あれば是正案を求めることで
パートさんに参加意識を持たせる。

質疑3:
改善の活動方法についてお教え願います。全員参加での活動を行われたとありますが、活動は業務時間内に行われたのでしょうか。また、パートの方の時給は発生しているのでしょうか。どの様に全員参加を実現されたのかご教授願います(体制、活動時間など)
回答3:
・情報共有、意見交換等の活動は業務時間内であり、時給としては発生しております。
・全員参加実施の為、パートさん勤務形態に合わせて、グループをつくり可能な限り就業内(不可能な場合は就業後)
30分?1時間/回 程度実施。活動期間中は1?2回/月開催

質疑4:
同期作業で複数台車を一括して歩行動線の改善になっているが、仕分同期ミスとかヒューマンミスは発生していませんか。
回答4:
ミスとしては発生しておりません。ご指摘あったところはビデオ映像が早送りにしてある最終作業かと推察しますが、同期させる最終手順ではリスト確認後、パレットに載せることでミスは防止出来ています。ただ、ご指摘あるヒューマンミスに対しては、対策弱いので現在表示方法等視覚に対して物的対策実施を検討しております。


〇発表事例:「現場の知恵」と「IT(情報技術)」の融合による絶え間ない改善
〇発表企業:キムラユニティー様

質疑1:
今後AGV導入を考えております。又、現在、受注の変動が多々あり、特に現場内のロケーション、物の流れ、流し方には苦労しており、シミュレーションツールは大変活用したく存じます。ツールは市販されているのでしょうか。
回答2:
残念ながら市販はしておりません。


〇発表事例:職場環境改善による作業者に優しい現場の構築
〇発表企業:コクヨサプライロジスティクス様

質疑1:
中部が他より生産性や品質が悪いのであれば、他とも比較されたと思いますが、それを上回る改善だったのでしょうか。
回答1:
配布資料にあります通り、他3センターの生産性平均40.6個/hを著しく下回っていましたし、品質も目標に遠く及びませんでした。(6ページ)そこで対策として第一ステップでは、作業者に優しい環境とピッキング効率を高めた改善を実施しました。
更に第二ステップでは、検品システムを構築した結果、生産性では13%の向上品質では80%削減と大幅な改善を実現しました。
結果として、生産性では2センターを上回り品質では過去平均を上回りました。

質疑2:
資料ではピック回数/月をABCDランク分けされていましたが、ABCDはそれぞれ比率としては何%ずつくらいでしたでしょうか
回答2:
Aランク⇒40%
Bランク⇒30%
Cランク⇒20%
Dランク⇒10%
上述の通りですが、定期的に出荷頻度を分析しながらロケーション移動を実施しており、更にムダ歩行の削減を狙っているところです。

質疑3:
これだけの改善を実現されていても「首都圏」の出荷生産性はさらに上回る数値(42個)となっていましたが、この差が何かをお教えいただけますと幸いです。(出荷ロット数の差でしょうか)
回答3:
ご指摘頂いた通り、出荷ロットの違いもあるのですが、中部の場合は一旦荷捌き エリアに集約し、検品作業、仕分作業、確定作業と作業工程が多い事が要因です。
又、首都圏ではHTを使用しており出荷から検品、確定処理までをシステム化して運用しておりますので、現状では上回るまでには至りません。しかし、目標は全センターでNo1を目指しております。


〇発表事例:自動車部品物流ヒヤリ事故撲滅活動
〇発表企業:ジヤトコ様

質疑1:
配置転換等の異動者により事故発生が多いとの事ですが、教育・免許運転技能評価はされていないのでしょうか。また、指差し確認による他弊害が発生(労災)、周辺環境、現場整理等の改善はどの様なことをされているのでしょうか。
回答1:
1)教育については資格指名教育及び追教育(1回/年)実施
追教育時実技評価・学科評価し80点以上合格となっています。
2)まずは基本となる動作を継続するため指差し呼称を定着させる活動をしています。
環境改善はリスクアセスメントを実施しリスク評価した結果で改善の優先度をきまっ対応しております。
大きな改善事例ではトラックポートの拡張工事し合わせて近隣住民への苦情がないよう防音壁の設置及び定期的騒音測定を実施しております。その他細かな改善も継続的に進めております

質疑2:
フォーク事故は重大な事態ですが、作業者の意識改革等について、フォーク業者からの教育を取り入れているのでしょうか。
回答2:
意識改革について落下再現動画をみせたりドライブレコードで自分の運転を動画で見て確認・・根気よく対話です。業者については弊社監督者は県のフォークリフト免許講習指導員も担当していますのでその指導内容も取り入れ実施しております。

質疑3:
ヒヤリハット発生内容からのリスク対策について教えてください。
回答3:
ヒヤリハットメモ及び作業観察(監督者)日頃のコミュニケーションからの監督者が確認し、リスクアセスメント表に落とし込みリスク表の実施し優先順位を決め子お金がかかるものに関しては安健部予算から改善費用で改善等進める、または役員報告会などで現状の分析からの対策案をプレゼンし改善を進めていくようにしています。

質疑4:
ドライブレコーダーによる指差呼称の動作確認を実施されていらっしゃいましたが、レコーダー導入の際、作業者の方々には、どの様なご説明をされ、今回の取組みに対して理解を深められたのでしょうか。また、当取組みに対して、作業者から大きな反対等は無かったのでしょうか。目視による動作確認ではなかなか実態が見えづらく貴社のレコーダーは非常に良いと感じました。レコーダー導入までのプロセスを是非詳しく教えていただけないでしょうか。
回答4:
導入当初は作業者からは監視されている等色々な意見がありましたが、作業者の動作を確認し自己分析(自分ではやっているつもりでも実際に見てみたら)に使うことを展開また事故等発生時の対策分析に使用することを説明。導入直後はよく実施している動画を公開し褒める動画として使用していきました。
次に動画を利用しKYTの材料にし危険予知訓練にも使用。
組員による動画での意見交換・・叱る怒るのではなく仲間同士で動画を見ながら意見交換を進めていきました(監督者はこの中に入らない)。
作業者が必要性を感じるまでには半年くらいはかかりますが監督者が事故を起こしたくない気持ちを作業者と根気よく話し合いながら進めていくことが大切と思います。


〇発表事例:誰でも出来る仕組みづくりによる業務効率の向上
〇発表企業:シンクラン様

質疑1:
弊社では担当者不在時の対応が出来ない場合も度々発生しております。お客様より担当者しか分からないお問い合わせがあった時にいつもお答えできず、ご迷惑をかけております。御社が「誰でも出来る仕組みづくり」(業務の標準化、業務マニュアルの作成)については、作業場はデメリットがあるのでしょうか?イレギュラーな事態が発生した場合はどうやって臨機応変で対応するのでしょうか。
回答1:
業務マニュアルや引継書の作成にあたってデメリットはありません。強いて申しあげますと、定期的な見直しが必要になってくるくらいです。当営業所でも、担当しか分からずお答え出来ずにご迷惑を掛けてしまい、そのため担当者が安心して有休取得出来ない状況でしたので、個人の担当業務に関しましては業務マニュアルを作成して貰い、また定期的にジョブローテーションを行い、誰でも対応出来るように致しました。それでも対応できない事案は正直ございますが、臨機応変に対応し、ほぼございません。

質疑2:
残業0は給与減になりますが、抵抗はなかったのでしょうか。
回答2:
残業代=給与的な部分がありましたので、所員からの反発/抵抗は当然ございました。

質疑3:
顧客との関係改善の中で、ローカルルールを具体的にどういった方法(手法)で提案されたのでしょうか。また、残業時間が減ることで従業員の皆様へはどういった対価(対応)を取られ、モチベーション(雇用維持)継続されたのでしょうか。
回答3:
残業減=給与低下に直結致しますが、対価はありません。ただ、長時間労働で起こりうる健康被害等を説明し、それよりも元気で永く働いていただける方が職場的にもよいと説得致しました。また、残業⇒変動費ですが、給与⇒固定費を上げる事が出来るようにスタッフのスキル向上にも努めております。

質疑4:
長時間労働の常態化を改善するには、非常に苦労されたと思われます。
A.一番苦労した点は何ですか。
B.キーワードである「対話」で注意した点は。労働時間の削減をすることで実質給与への影響もあったと思います。
C.社員の待遇や賃金制度の変化、変更などは実施したのでしょうか。
回答4:
A.相手の考えなどを引き出すのに一番苦労致しました。
B.相手が発した言葉は真摯に受け止め、特に収入に関する話題に一番気を遣いました。その場で即答出来ないことは後日、必ず返答致しました。
C.社員の待遇などの変化/変更は一切ありません。

質疑5:
残業0→収入源という社員のモチベーション低下の課題で対話を活発にしたポイントを教えてください。また、664時間は何人でその残業時間か教えてください。
回答5:
・これは7人での残業時間です。
・ミーティング以外に一日に5分程度スタッフ全員で集まり、雑談タイムを設け、相手の興味を持ちそうな話題を振りました。
とにかく明るく楽しく何でもみんなで言い合い、決めあえる(=全員で運営する)職場の雰囲気を作りました。


〇発表事例:ピッキングカート及び屋内測位データを基にした改善と効果検証
〇発表企業:富士ロジテック様

質疑1:
動線解析のための機材の初期コスト等、UWB屋内測位の導入費用はどれ位するのでしょうか。
回答1:
今回のUWB屋内測位はNICT様の実証実験ですので価格は判りません。現在他社が販売している測位機器は方式と測位精度により異なりますが、機器のみのテスト購入は100万円程度からあります(方式と機材の数量により増額します)。但し、これはあくまで導入実験ベースとお考えください。
本格的に導入しようとすると精度や機器数にもよりますが、機器代金だけで百万円台後半からの費用を想定されたほうが良いでしょう。
計測を提供するサービスは、1週間(実測1日)で100万円程度からです。(数社がサービス提供していますので、詳細はネットで調べて頂けば良いでしょう)
弊社でも機器販売及び計測サービス(期間1ヶ月・実測2週間)の実施を計画中です。機器販売は基本セット(アンテナ10台・移動機10個)で300万円程度、計測サービスは50坪・10人あたり高精度測位で150万円程度を予定しております。

質疑2:
伝票件数を増やす→歩行移動距離減少につながりますが混雑緩和は結果、最短距離につながるのでしょうか。停滞ムダ時間の短縮につながるのでしょうか。ロケーション見直し、行数増加は移動距離減少につながることは理解できるのですが、混雑緩和のつながりがよく見えませんでした。
回答2:
カートを押してのピッキング作業ですので、次のピッキング場所に移動する際、最短経路の通路で複数作業者がピッキングしていると複数のカートが停車しているのですぐに移動ができず、通路が空くのを待つか大回りをすることになります。
混雑を緩和することで、移動をスムースに行い移動時間と距離を短縮できます。


〇発表事例:ベアリング部品プロセス全体の課題明確化による作業生産性の向上
〇発表企業:リコーロジスティクス様

質疑1:
従業員の意見に「否定しない」とありましたが、「否定しない」意見とはどんな事がありましたか。克服する秘訣を教えてください。
回答1:
「否定しない」事による理由は、以下のような意図があります。
・リーダーとのグループ討議で意見を出して頂く際に最初から否定に入ると意見が出なくなる恐れがある。
・基本改善は上長からの指示で行うと「継続しない」傾向にあり、「自分たちで考え、実行」した改善は継続及び進化に結びつくことが多い。
・コーチング手法を用いることでより良い意見を引き出す。
・上がってきた意見に対してグループ員内で討議(考える)ができ、チームの纏まりに繋がると思います。
・従業員が通常作業時にも疑問や問題(課題)を意識するようになる。


〇発表事例:タブレット端末導入による作業標準化について(品質・効率の向上)
〇発表企業:佐川グローバルロジスティクス様

質疑1:
今後の取組みとして「見える化」でカラーマネジメントを行っていくとの事でしたが、具体的な内容(どういったものを、どのように)を教えていただけますでしょうか(例えば、カラーの選択基準や、カラーの使い分けなど、どのような目的でカラーマネジメントを採用されたのか)。
回答1:
【カラーの選択基準について】
色彩理論からみて、本来ですと中間色や寒色で環境を統一し、危険箇所や要注意商品に暖色を用いるのが理想でしたが安価な機材を優先した結果、赤・青・緑・黄・黒といったカラー選択となりました。
【カラーマネジメント導入の目的】
・初心者でもすぐに理解出来る(判断の簡素化)
・誰でも理解出来る(老眼の方)
よって優先度や緊急性の高いものを色分けしているのではなく、"色の違い=作業指示"という位置づけで導入しました。

質疑2:
第1ステップ改善事例の中で達成感を引き出し、モチベーション向上を図る、とありますが、具体的に誉める事意外に、どのような方法で評価し、モチベーションを向上させたのでしょうか?給与や地位(ランクアップ)、就労条件の向上などどれが効果的でしたか。
回答2:
人によって感じ方は様々かと思いますが
"自分の仕事に対して安定した高い評価をしてくれている"という部分が非常に重要と認識しております。
よって"誉める"というやり方の中でも様々な工夫をこらしております。
・スタッフリーダーによる定期的な意見交換
・現場担当社員による個人別生産性の提示と意見交換
・半年に一回程度、管理職社員による面談
といった取組みを行っております。
特にスタッフリーダーの働きは重要となります。小規模グループを形成しスタッフリーダーを中心に様々な問題に対して改善を図っております。その土台となるのは"透明性が高く平等な待遇"となりますので、可能な範囲でオープンにしております。

質疑3:
ピッキング作業の中で1位の「歩行」を重点項目にされなかったのは何故でしょうか?(歩行+商品を取る=45%を締めています。これらの「動作的側面」のウエイトが極めて高いところを先に改善活動されなかった理由が何かあったのでしょうか。
回答3:
「在庫ABCランクづけによる歩行距離短縮」といった手法が一般的かと思います。荷主様の場合は在庫登録から約3ヶ月以内で必ず販売を行う運用です。基本的な在庫滞留期間は約1ヶ月となりますので"不動在庫"が発生しません。
しかしながらウェイトが高い動作項目である事は間違いないですので、「近接ロケーション毎に出荷指示を仕分しまとめてピッキングを行う」という改善も行っております。

質疑4:
改善の背景にある目標90PPMの根拠はなんでしょうか。目標を66%削減に設定した際の反応(拒絶)はありましたか。
またITFコードを利用した機械検品後53PPMは大きな効果ですが、逆に機械検品後の品質エラーにはどんなものがありましたでしょうか。
回答4:
PPM値の設定については荷主様とも意見交換を行い「ミスに至った真の原因はどこの工程かを分析する為の指標」という主旨で設定しました。
ご存知の様にPPM値は"分母をどこに設定するか?"で結果が大きく異なります。
・誤出荷には至らないが生産性を大きく損ねるイレギュラー作業(不適合)
・販売機会の損失に繋がる恐れもある顧客対応窓口の品質
といった様々な課題がある中で、先ずは洗い出しが容易な案件に絞ってKPI管理を継続していこう...という共通認識で進めております。
【機械検品後の品質エラーについて】
エラー項目については"商品状態の差異(汚破損)"がほぼ100%です。取り扱っている商材が中古品の為、荷主様とUser様との間で "ネットでの写真と現物商品状態の認識に差異があった"という内容です。よって"誤出荷"は発生しておりません。

以上