九州ロジスティクス活性化研究会11月度(第5回)開催のご報告

平成27年度第5回(11月度)の研究会は、「新『全社的常時スタッフ最適配置システム』の実現」の題目で、丸二倉庫株式会社業務部課長の国分様にご講演を頂きました。同社の取り組みは、昨年度のJILSロジスティクス大賞の業務改革賞を受賞したものです。研究会では、3PL事業を展開する同社がLOW-COST運営の更なる追求と高精度管理、HIGH-SPEED処理、業務量の波動変動問題をいかに解決し、スタッフ最適配置を実現しているかについて、詳細に解説頂きました。
業務量変動への対応は、ロジスティクス分野に共通する最大課題のひとつです。関東と関西に2つの拠点地域(事業所集中エリア)を持ち、ドミナント方式で事業展開を行っている同社においても、拠点地域内での波動変動への対応は、高コスト要因の課題でした。この問題に対して、「STAFF R&D "?"(人的資源の研究開発)」と称し、(1)多能工化と業務習熟度向上、(2)それをサポートするオリジナルサポーティングソフトウェア開発、の2つの取組みを進めて来られました。
入庫・出庫・返品といった倉庫業務を、個々の業務を分解して解りやすく整理し、個々の業務ごとに求められる習熟度を明確化したうえで、新人にはベテラン指導員が付いて定められた回数の教育と実践を行い、定期的に評価・判定。それを都度ソフトウェアに記録することで、個々のパート・スタッフの習熟度レベルが全社的にひと目で確認できる仕組みが構築されています。それによって、拠点地域内の特定の倉庫で業務量が急増する状況に対し、必要スキルを持ったスタッフを適切に配置することが実現されています。業務ボリュームが多い時期は、とにかくスタッフの頭数を増やしてなんとか対処する、という方法に依存する企業も少なくないですが、そのことによって非効率と高コスト化を招いてしまいます。予め必要な業務量を把握し、それに対して最適なスタッフ配置を行うことで、ムダのない効率的な人材配置を実現しているのが同社の取り組みの優位点です。
また、業務効率が向上するのみならず、習熟度レベルの透明化と自己の到達レベルの把握とフィードバックの継続によって、スタッフのやりがいが大きくなり、結果としてパートの定着率の向上、コスト削減、物流品質の向上がいずれも実現しているとのことです。習熟度についてその都度記録を残すという行為は手間でもあり、当初は現場から反発もあったとのことですが、逆に記録を残すことで最適のスタッフ配置が実現し、「仕事が楽になった」という実感がスタッフにも得られている点がポイントであったようです。
最後に、このような細やかな取り組みが実現するためには、現場の課題を解決して経営向上を実現しようとするトップのリーダーシップと、長年に渡るQCサークル活動と提案制度の実施といったボトムアップの両方が不可欠であることも確認できました。
(文責:高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)