九州ロジスティクス活性化研究会3月度(第9回)会合のご報告

九州ロジスティクス活性化研究会3月度(第9回)会合のご報告

九州ロジスティクス活性化研究会3月度(第9回)会合として、3月13日(金)東レ株式会社 物流部長の澤野 幸男 様より「東レの物流改革 -固定観念からの脱却と意識改革によるトータル競争力の強化-」のテーマでご講演をいただきました。

主査の高田先生よりコメントをいただきましたので、掲載をいたします。

九州ロジスティクス活性化研究会【3月13日(金)】高田主査コメント

平成26年度第9回(3月度)の研究会は、「東レの物流改革」の題目で、東レ株式会社 物流部長の澤野様にご講演を頂きました。 同社は、最近ではユニクロとのヒートテックなど素材の共同開発や、ボーイング787型機をはじめとする新型航空機への炭素繊維素材の供給などで話題となっています。経営面では、2006年から2009年の期間で大きな経営課題の克服を図り、現在は新たな成長戦略を実行している途上とのことです。

同社の経営戦略の中核をなす4つの戦略において、「グリーンイノベーション」、「ライフイノベーション」、「アジア・アメリカ・新興国事業拡大」などと並んで「トータルコスト競争力強化」が掲げられ、物流戦略はこの中に組み込まれています。つまり、物流部門単独の取り組みというよりは、全社的な目標のなかで物流部門が及ぼす影響やもたらしうる価値を社内で共有しながら、他部門や社外と連携して戦略が実行されている点が特徴的です。

具体的には、「既成概念からの脱却」「発想の転換」「壁を越えた連携」の意識改革のもとで、物流部員が60の改革提案を整理・提示し、関連部署や外部ステークホルダーと協力しながらトータルコスト削減にむけて活動を続けています。

このような活動を円滑かつ効果的に行うために、例えば物流部員には、営業部や関係会社、海外経験者、外国人、物流他社(中途採用)、などを意識的に構成員に含めるようにし、「新しい視点」で物流部の業務を捉え直す風土を形成し、「ガラパゴス化」を回避する努力がなされています。また、社内関係部署の物流への正しい理解を促すために、社内研修講座(必須)の中に「物流コース」を設け、知識や意識のレベル合わせが行われています。その過程では、「タウンミーティング」と呼ばれる小集団での勉強会を頻繁に行うなど、表には出てきづらい緻密な活動も展開されています。

このような活動を継続することによって、東レ(単体)での運輸比率(対売上高)は、かつて1.8%を超えていたものが、近年では1.5%程度まで低下させることに成功しています。同時に、社としてのCO2排出量も、かつては8%近かったものが、近年では5%程度まで低下しています。

以上のような同社の取り組みをお聞きすると、奇をてらった内容ではなく、取り組むべき課題を明確化して全社的に共有し、その実行にあたっては物流部に閉じずに関係部署(特に営業部)を巻き込みながら成果を上げる、という極めて地に足の着いた取り組みだということがよく判ります。また、そのことによって改革の効果を高めることに成功しているとも言え、経営改革・物流改革の着実な実行という面で、大いに参考になるご講演でした。

(文責:高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)