九州ロジスティクス活性化研究会報告「TOTOの経営戦略とロジスティクスへの取組み」

 九州ロジスティクス活性化研究会の第6回会合を12月20日(金)にホテルセントラーザ博多にて25名の出席のもとに開催いたしました。

 物流・ロジスティクスの改革は、生産や仕入部門、営業部門、また納品先である顧客との一体化した価値の共有化が必要不可欠であり、経営幹部や上級管理者の強い意志とヘッドシップが重要となります。

 現状の仕組みは担当部門にとってルーティン化されある種の安心感があります。

 それを変えるということに関しては様々な抵抗が必ず発生し、それを打破する必要があります。

 また、現場改善については改善の目標・目的をオペレーションの担当者に正しく理解してもらい、ボトムアップのアイデアを効果的に実践し、目標達成の喜びを共感できる仕組み仕掛けづくりが必要であり、それをコーディネートできるリーダーの育成が重要となります。

 主査の高田先生の当日の「連続性の中に、不連続の刺激を与えて活性化することが重要」とのコメントは正に改革・改善の原点と思いました。

 

 

九州ロジスティクス活性化研究会

第6回会合【12月20日(金)】高田主査コメント

 12月20日(金)の九州ロジスティックス活性化研究会の第6回研究会は、研究会メンバーであるTOTO(株)物流本部の加藤様より、「TOTOの経営戦略とロジスティックスへの取組み」というテーマで、2012年度「ロジスティックス大賞」の受賞対象となった物流革新活動とその成果についてお話頂くとともに、初の試みとして、事前に提示された「課題」にもとづき、参加者でディスカッションを行いました。

 まず、TOTOの物流革新活動とその成果ですが、同社では2010年から物流革新に取り組み、物流センター出庫作業に従来は1.5日要していたところを、検品場の荷物滞留防止や搬送ラインの撤去などによって、午前中入庫・午後出庫が実現しました。これによって、出庫当日の午前中まで顧客からの注文変更に対応可能となり、施工現場のニーズに柔軟性をもって応える体制を実現しました。その他にも、物流全体のリードタイムの短縮、物流センター内の徹底的なムダスペースの排除と有効活用、荷札差しの改善による15分単位での作業の見える化など、多くの改善に取り組み、物流プロセス総体の革新への取り組みについて、詳細に解説頂きました。

 そのうえで、予めTOTO様より研究会メンバーに提示されていた課題、(1)「中長期的(5〜7年)に物流の現場改善力を高め、継続・強化していくためには」、(2)「少子高齢化社会が進む中で、ロジスティックスにおけるITが果たす役割について」の2点について、メンバー間で活発な意見交換を行いました。特に、物流の現場改善力の向上については、既に多くの物流現場で試みられているものの実現は簡単ではないとの認識が共有されました。それを踏まえて、参加メンバーからは、「現場で合意形成を図りながらまとめあげるタイプのリーダー人材育成の重要性」や「人事異動を活用した"新鮮な目"による現場の改善点の発見」、「少数の自然(じねん)性人材の存在と、周囲へ影響を拡大する"ドラマチックな演出"の有効性」など、多くの有益な意見が提示され、研究会メンバー間での共有が進みました。

 今後も、この研究会メンバーからの課題提示とそれにもとづくディスカッションを行う試みを、年に1〜2度は行いたいと考えています。

(文責 高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)

 

◆高田 仁 氏

九州ロジスティクス活性化研究会 主査

JILS九州ロジスティクス委員会副委員長

九州大学大学院 経済学研究院 准教授

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1990年に九州大学工学部卒業後、大手メーカーに勤務。1995年に九州大学大学院(工学研究科建築学専攻)にて修士課程を修了、コンサルタント会社にて学術研究都市やサイエンスパークなど地域計画の立案に従事。1999年、(株)先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI、現東大TLO)の経営に参画し、2002年まで同社取締役副社長兼COO。2003年に九州大学ビジネス・スクール助教授。同年10月から2010年まで九州大学知的財産本部技術移転グループリーダーを兼務。2005年から2010年まで総長特別補佐。2007年九州大学ビジネス・スクール准教授。また、2009年から翌年まで米国MIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員、その後、九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センターの設立に参画し、2010年より同センター兼務。