九州ロジスティクス活性化研究会報告「物流子会社戦略と物流品質」

 

 九州ロジスティクス活性化研究会の第5回会合を11月15日(金)にホテルセントラーザ博多にて21名の出席のもとに開催いたしました。

 

 物流子会社は親会社の経営戦略の見直しにより、近年、M&Aの対象となったり、再度親会社の機能組織に編入されるなどの動きが多く見受けられます。

 特に、大手メーカの場合、グローバル展開が急速に進むとグローバル業務を遂行するスタッフや部門を持っていない物流子会社はその行く先が不透明な状況になると言われています。

 一方、物流子会社は物流業務管理と物流センター運営に特化する方向で進んできましたが、今後は、トラックドライバー不足に起因する車両手配が困難になることが想定され、それに対応するために物流子会社において実運送の役割を担う部門を持つところが増えるのではないかとの予測もされています。

★研究会の詳細はこちら↓※会期途中のご参加も歓迎いたします!

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九州ロジスティクス活性化研究会

第5回会合【11月15日(金)】高田主査コメント

 11月15日(金)の九州ロジスティックス活性化研究会の第5回研究会は、(株)バンダイロジパル代表取締役社長の馬場範夫様より、「物流子会社戦略と物流品質」というテーマで講演頂きました。

 

 バンダイナムコグループにおける同社は、3PLとして位置づけられ、さらにその子会社で実運送・実倉庫業務を担う(株)ロジバルエクスプレスと役割を分担する構造となっています。興味深いのは、かつては物流子会社として自立を目指し、1992年にはJASDAQ上場を果たしていたにもかかわらず、親会社の合併に伴って上場廃止し、グループ業務に軸足を置いた経営へと変革を果たしたところです。このときに、同社の役割についてグループ内でしっかりとした議論が行われ、最終的には「上場を廃止してグループ業務に軸足を移してグループ貢献を行い、グループ各社の業界競争優位性を実現するが、同時に、受託機会を拡大し、存在意義を拡大する」という立ち位置が明確化されました。つまり、同社の"評価"の根拠が明確化され、それが親会社との間でしっかりと合意されたのです。そのため、親会社のバリューチェーンのどこを担うべきか、常に親会社と密接な情報交換や交渉を行い、グループ内機能の中で同社が受けたほうが良い業務を積極的に取り込み、グループ全体でのコスト削減で利益貢献を続けています。そのような活動の中で、例えば、物流デスクを各社に置いてグループ別物流の効率化を提案実行する、といった"共創"が行われています。

 

 ともすれば物流子会社は、 親会社やグループ全体の経営効率化や生産〜在庫管理のバッファ部分としてしか位置づけられず、結果として戦略的機能を担い得るに至らないケースがありますが、同社の場合は、グループとの積極的交渉を通じて、言わば"戦略パートナー"としての地位を獲得しており、その地位を継続するために、どのようにすればグループへの貢献が実現するかを日々考え挑戦し続けているという姿勢が鮮明です。

 

 親会社と物流子会社の関係性のあり方について考察するときの非常に良いモデルケースだとの印象を持ちました。

 

(文責 高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)

 

◆高田 仁 氏

九州ロジスティクス活性化研究会 主査

JILS九州ロジスティクス委員会副委員長

九州大学大学院 経済学研究院 准教授

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1990年に九州大学工学部卒業後、大手メーカーに勤務。1995年に九州大学大学院(工学研究科建築学専攻)にて修士課程を修了、コンサルタント会社にて学術研究都市やサイエンスパークなど地域計画の立案に従事。1999年、(株)先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI、現東大TLO)の経営に参画し、2002年まで同社取締役副社長兼COO2003年に九州大学ビジネス・スクール助教授。同年10月から2010年まで九州大学知的財産本部技術移転グループリーダーを兼務。2005年から2010年まで総長特別補佐。2007年九州大学ビジネス・スクール准教授。また、2009年から翌年まで米国MIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員、その後、九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センターの設立に参画し、2010年より同センター兼務。