九州ロジスティクス活性化研究会報告「物流経営・業務品質管理と収支日計」 

九州ロジスティクス活性化研究会の第3回会合を9月20日(金)にホテルセントラーザ博多にて28名の出席のもとに開催いたしました。

「見える化」が経営のキーワードとして注目されている今日、Webやクラウド、スマートフォーンやタブレット等のICTの急速な進展により、大変廉価に活用出来る時代を迎えています。

また、ほぼリアルタイムで国内はもとより海外の業務状況を把握出来る様になりました。

しかし、物流・ロジスティクスは極めて業際的(荷主企業と物流企業連携)な活動であり、社会システムであります。

このICTを産業界全体として有効活用するための物流・ロジスティクスのプラットフォームの構築が必要不可欠であること痛感しました。

 

★研究会の詳細はこちら↓※会期途中のご参加も歓迎いたします!

http://jils.force.com/ShareDetail?productid=a0R10000002KmA6EAK

 

 

九州ロジスティクス活性化研究会

第3回会合【9月20日(金)】高田主査コメント

9月20日(金)の九州ロジスティックス活性化研究会の第3回研究会は、(株)ロジスティックス・サポート&パートナーズ代表取締役社長の黒澤明様より、「物流経営・業務品質管理と収支日計」というテーマで講演頂きました。

前半は物流業務の可視化状況について、後半は輸配送業務の収益と「収支日計」についてお話頂きました。

前半は、物流企業の経営環境が厳しさを増す中では、日常業務の"結果"を見るのではなく、「可視化」と「PDCA」によって業務の"経過"を適宜管理し、ミスやロスを最小限に抑えることの重要性について強調されました。その際に、運行稼働状況や車両管理の「見える化」が重要となりますが、スマートフォンを利用した取り組みも一部始まっているという事例の紹介も頂きました。これに関する質疑応答では、スマートフォンによる管理は、ドライブレコーダーに加えてデジタコの管理に関する国の規制の動きもあるため、どのような方向に落ち着くかはまだ不透明との現状認識が共有されました。

後半の「収支日計」について、まず「生産性トップ20企業の9割が収支日計を導入しているのに対して、それ以外の企業の導入は3割弱にしか達していない」という物流生産性調査(2010)の結果が示され、PDCAを速く回すための収支日計の重要性について、現場レベルでの導入経験を踏まえた説明がなされました。

データの収支日計を行うためのデータの「見える化」は、ともすればITシステム投資などハードルの高さをイメージしてしまいがちですが、黒澤社長の説明は、「まずはエクセルで簡単に始めてみて、どんなデータをどう管理すれば知りたい情報が得られるか、管理のコツを掴んでからシステム投資へと移行すれば良い」や、「正確性よりスピード重視」、「数字は全て社内でオープンにし、頑張る社員が辞めない仕組みにする」、「成績表と配車表をリンクさせてやる気のある社員のモチベーションを上げることで、配車係とドライバーとのトラブルを解消する」といった、たいへん判りやすい管理上のコツについても数多く説明いただきました。

実は、私が専門とするアントレプレナーシップの分野では、先が不透明な環境でどのように行動することが有利な結果を生むかについて研究が進んでおり、そこには(1)手持ちの手段を使ってとにかく速く行動する、(2)可能な範囲の資源投入に留める、(3)他人の力を借りる、(4)まず試してみて、そこからフィードバックを得て次の行動に移るというサイクルを速く回す、というCreActionと呼ばれる行動様式が成功の条件だということが明らかとなっています。

今回の黒澤社長のお話を聞きながら、先行き不透明な時代におけるCreActionの重要性について、改めて確認できたことも大きな収穫でした。

(文責 高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)

 

◆高田 仁 氏

 

九州ロジスティクス活性化研究会 主査

JILS九州ロジスティクス委員会副委員長

九州大学大学院 経済学研究院 准教授

九州研究会主査.bmp

1990年に九州大学工学部卒業後、大手メーカーに勤務。1995年に九州大学大学院(工学研究科建築学専攻)にて修士課程を修了、コンサルタント会社にて学術研究都市やサイエンスパークなど地域計画の立案に従事。1999年、(株)先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI、現東大TLO)の経営に参画し、2002年まで同社取締役副社長兼COO2003年に九州大学ビジネス・スクール助教授。同年10月から2010年まで九州大学知的財産本部技術移転グループリーダーを兼務。2005年から2010年まで総長特別補佐。2007年九州大学ビジネス・スクール准教授。また、2009年から翌年まで米国MIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員、その後、九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センターの設立に参画し、2010年より同センター兼務。