九州ロジスティクス活性化研究会報告「日本における3PL事業の限界とその克服への打ち手」

 

 

 九州ロジスティクス活性化研究会2013の第2回会合を7月19日(金)にホテルセントラーザ博多にて26名の出席のもとに開催いたしました。

 3PL事業は成長市長との期待感がある反面、儲からないビジネスモデルとの声を多く聞くようになりました。果たしてその通りなのでしょうか?

 今回は、その3PL事業の誤解や課題と、今後の課題解決方策についてゲスト講師のご講演とディスカッションで大いに議論が湧きました。

 

★研究会の詳細はこちら↓※会期途中のご参加も歓迎いたします!

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九州ロジスティクス活性化研究会

第2回会合【7月19日(金)】高田主査コメント 

 

 719日の第2回研究会は、日本通運(株)関西営業部の西谷常務理事様より、「日本における3PL事業の限界とその克服への打ち手」のテーマで講演をいただきました。 

 

 これまで、物流・ロジスティックス業務の多様化と更なるコストダウンに向けた効率化に対応するかたちで3PL事業が拡大してきました。その中で、波動分析などの物量分析、作業分析、在庫分析、業務プロセス分析など、分析手法や関連技術は向上したものの、そもそも3PL事業がうまく立ち上がらず、不採算状態から逃れられない事例も多いが、それは何故なのか?という問題意識から講演はスタートしました。

 

西谷様からは、その要因として、顧客企業と3PL事業者との間で不確実性を最小化出来ていない(平たく言えば、出荷量の増大に伴う残業の発生等の想定されるリスクについて顧客企業と3PL事業者の間で十分に認識・情報・役割・責任が共有されていない)ことが挙げられました。そもそも、自社の利益率向上を狙って物流・ロジスティクス部門を切り出して効率化する方策のひとつが3PLだったわけですが、両者の役割や責任について十分に練られないまま、3PL事業をスタートさせてしまう構図が続いていたわけです。

 また、作業現場の各種法規制を見直し、混合作業を認めて欲しいとの規制緩和の要望や、作業者の方々が働きがいを持って仕事が出来る賃金制度や人事評価制度の必要性について述べられたことはメンバーの多くの共感を得られたと思います。

 

 結局のところ、顧客企業と3PL事業者が、相互に踏み込んだパートナーシップにもとづいて新しい価値創造に挑み、その実現のための役割・責任分担の姿を戦略的に描き切ってから事業をスタートさせるほかないようです。異なる組織がスムーズに連携するためには、自社のみに通じる暗黙知を形式知化するといった取り組みも必要となることが明らかとなりました。

 

(文責:高田 仁、九州大学大学院経済学研究院)

 

 

◆高田 仁 氏

九州ロジスティクス活性化研究会 主査

JILS九州ロジスティクス委員会副委員長

九州大学大学院 経済学研究院 准教授

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1990年に九州大学工学部卒業後、大手メーカーに勤務。1995年に九州大学大学院(工学研究科建築学専攻)にて修士課程を修了、コンサルタント会社にて学術研究都市やサイエンスパークなど地域計画の立案に従事。1999年、(株)先端科学技術インキュベーションセンター(CASTI、現東大TLO)の経営に参画し、2002年まで同社取締役副社長兼COO2003年に九州大学ビジネス・スクール助教授。同年10月から2010年まで九州大学知的財産本部技術移転グループリーダーを兼務。2005年から2010年まで総長特別補佐。2007年九州大学ビジネス・スクール准教授。また、2009年から翌年まで米国MIT(マサチューセッツ工科大学)客員研究員、その後、九州大学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センターの設立に参画し、2010年より同センター兼務。