第5回 (2017/4/25掲載) |
~執筆者紹介~
シンバホールディングス株式会社 人材育成・改善業務活動・情報システム事業統括 専務取締役 雨宮 路男
2006年 株式会社ロジワン 改善統括
2006年 株式会社SBSホールディングス 改善統括・改善推進
2010年 株式会社あんしん 改善統括・現場改善・人材採用・人材育成
2017年 シンバホールディングス株式会社 現在に至る
JILS 物流現場改善推進委員会 委員、物流現場改善士専門委員会 委員・講師、流通経済大学 担当講師
専門は、改善人材育成・現場改善指導・経営診断指導・経営幹部研修
- 1.企業は物流現場改善にどう向き合うか
- 2.物流現場力を育む企業の取り組み
- 3.物流現場改善を支援する評価制度
- 4.改善成果の横展開、「改善事例発表会」
- 5.人材の採用と教育がもたらす社内の活性化
- 6.改善サイクルと人事サイクル
1.企業は物流現場改善にどう向き合うか
物を動かす作業が機械化されているか否かで、物流現場の改善は現場データの把握方法に違いがある。従業員への改善目標数値、改善意識の持たせ方で、改善活動への向き合い方が変わり、活発になっていく。物流現場は従業員から自発的に改善活動が始まるという環境にはなり難く、改善活動を推進するには「改善リーダー」が必要になる。
そのリーダーは、物の流れを合理的でローコストに組み立てる意識があり、日々変化する物の流れに対して継続して結果を出し続ける強い意欲が不可欠である。企業はそのような人材を常に育て、適材適所な人員配置を計画的に実施すべきである。改善活動の活性化はリーダーの人員配置方法次第で変わってしまう。
そのためには、企業が年度の事業計画を作成する際、会社のトップがその方針の中に「改善の活動方針」を意図的に盛り込まなくてはいけない。トップの方針として改善活動を決定し、トップが現場の改善結果を評価すべきである。企業の収益の源は、コストをかけない現場であり、コストをかけない現場づくりには生産性を向上し続けるという改善活動に取り組む企業風土が必要になる。各物流現場に対して個人単位で、庫内業務・配送業務を効率化し、現場で経営の利益目標を数値化出来る方向に誘導すべきである。改善活動の数値を把握できていない多くの物流現場では、数値目標を立てる仕組み作りから入らなければならない。
そのためには、企業が年度の事業計画を作成する際、会社のトップがその方針の中に「改善の活動方針」を意図的に盛り込まなくてはいけない。トップの方針として改善活動を決定し、トップが現場の改善結果を評価すべきである。企業の収益の源は、コストをかけない現場であり、コストをかけない現場づくりには生産性を向上し続けるという改善活動に取り組む企業風土が必要になる。各物流現場に対して個人単位で、庫内業務・配送業務を効率化し、現場で経営の利益目標を数値化出来る方向に誘導すべきである。改善活動の数値を把握できていない多くの物流現場では、数値目標を立てる仕組み作りから入らなければならない。
2.物流現場力を育む企業の取り組み
物流現場で流れている物の中身は日々変わっているが、現場業務で見ると外見は商品を扱っている為、業務の改善に対して企業側から「変える要求」がないと、現場は「変える意欲」が沸き立たない環境となる。改善の意欲を育むには、いかに刺激的に強い変化を浸透させられるかであり、何の為に改善し続けるのかを理解させないと、現場の高い改善意欲は継続しない。現場の活性化には変化が必要だが、日常の流れの中ではトラブル(=異常)が変化対応になり、トラブルが日常業務を忙しくしている。そしてその状態を変化していると錯覚し、トラブル対応が改善活動であると思い込んでしまう。
現場は正常に運営されるのが当たり前である為、緊張感・危機感を現場に与える仕掛けが企業側から必要になる。「棚卸し・調査・監査・報告」等は現場の数値評価で、毎年継続的に実施される事である。評価に合格すればさらに次の高い目標を目指し、不合格であったとしても問題解決する向上心を現場リーダーに持たせられれば、現場の活性化は持続する。
現場は正常に運営されるのが当たり前である為、緊張感・危機感を現場に与える仕掛けが企業側から必要になる。「棚卸し・調査・監査・報告」等は現場の数値評価で、毎年継続的に実施される事である。評価に合格すればさらに次の高い目標を目指し、不合格であったとしても問題解決する向上心を現場リーダーに持たせられれば、現場の活性化は持続する。
3.物流現場改善を支援する評価制度
物流現場担当者は、同じ現場に2~3年、長い場合は10年以上も同じ現場に勤務している実態があり、企業側も現状に問題が無ければそのままで良いとし、変化を求めずに、現場改善のニーズが物流現場から湧きあがらない場合がある。また、人・車・商品の事故でも起きないとそのままの状態に満足し続けてしまう現実がある。その中で、改善結果を評価する事に対して「評価を期待しない」現場と「評価を気にしない」現場がある。
そのため、どのような評価の仕方が現場への励みになるか、見極めて評価しないと、改善活動を評価した事が現場や本人を目立たせ疎まれるという悪い結果に繋がる場合がある。そこで、評価される本人だけでなく、改善チームのメンバーと事業所の全員が、良くできたと褒められる評価が必要になる。つまり、次の改善への意欲が更に沸き、受けた評価を次回につなげて行けるような累積評価を考えるべきであろう。評価された栄誉がその人たちから後輩に引き継がれていく歴史を現場に残す仕掛けが必要である。また、評価されなかった人たちが、次回こそは自分たちが「評価されるのだ」という目標を持てるような配慮も必要になる。
そのため、どのような評価の仕方が現場への励みになるか、見極めて評価しないと、改善活動を評価した事が現場や本人を目立たせ疎まれるという悪い結果に繋がる場合がある。そこで、評価される本人だけでなく、改善チームのメンバーと事業所の全員が、良くできたと褒められる評価が必要になる。つまり、次の改善への意欲が更に沸き、受けた評価を次回につなげて行けるような累積評価を考えるべきであろう。評価された栄誉がその人たちから後輩に引き継がれていく歴史を現場に残す仕掛けが必要である。また、評価されなかった人たちが、次回こそは自分たちが「評価されるのだ」という目標を持てるような配慮も必要になる。
4.改善成果の横展開、「改善事例発表会」
改善成果を意欲的に学ぶ姿勢は、現場に自然発生的には起きない。横展開は受けるものでなく、学びに行くものだが、真似た事例を自分たちで作り上げた事例にすり替えられるかがポイントになる。現場改善とは自分たちで創り出し、引き継いでいくべきであり、改善を仕上げた人が現場から去ると、積み上げてきた改善が忘れ去られ一からの改善を再度始める事になりかねない。つまり、改善成果は積み重ねであり、継続した改善成果がないと、経営上の利益として前年比改善につながらない。
そして、改善事例発表会は毎年の継続が重要である、改善発表が発表現場及び発表者で片寄り、一部の人たちの参加となり、参加しない人が出てくる場合があると発表会が全社的な発表会では無くなり、挫折してしまう。このようなことを見ると、改善発表会自体は毎年開催するが、発表者に「条件を付ける」開催が好ましいと考える。そして、改善事例が新しい着眼点を持つことも魅力的だが、毎年新鮮な顔触れで、真剣に発表する方が、より多くの感動が生まれる。さらに、改善事例発表会での発表事例に感動することで、参加者が見聞きした事例を吸収し、学び取る事が横展となる。改善事例発表会は、そこで発表された他の現場の優れた改善事例を共有する場として、使うべきである。
そして、改善事例発表会は毎年の継続が重要である、改善発表が発表現場及び発表者で片寄り、一部の人たちの参加となり、参加しない人が出てくる場合があると発表会が全社的な発表会では無くなり、挫折してしまう。このようなことを見ると、改善発表会自体は毎年開催するが、発表者に「条件を付ける」開催が好ましいと考える。そして、改善事例が新しい着眼点を持つことも魅力的だが、毎年新鮮な顔触れで、真剣に発表する方が、より多くの感動が生まれる。さらに、改善事例発表会での発表事例に感動することで、参加者が見聞きした事例を吸収し、学び取る事が横展となる。改善事例発表会は、そこで発表された他の現場の優れた改善事例を共有する場として、使うべきである。
5.人材の採用と教育がもたらす社内の活性化
新卒の採用と育成は企業の成長には必要不可欠である。新卒の戦力化には、教育方法、手本となる上司・先輩が必要になる。一方、中途採用での戦力補強も考えねばならないが、人材の採用方針は企業の成長度によって変わってくる。
人材の採用が現場に多くの刺激をもたらす。新人が現場に入ると、「現場ルール」を今あるものとして教えるが、指導者はここで「教える難しさ」に気付く。他社での経験者は、既存のルールを理解せず、自分なりのやり方をしてしまう場合もあり、新人はきちんと聞き、その通りに実行しようとするが先輩のように上手く行かない。そこで考え努力するという状況が現場に新たな改善の気付きを生み出していく。
組織上の上位職ほど、現場を作り上げてきた自負がある為、現場を変えるということに抵抗があり、現状変革を受け入れ難いという風土がある。職場活性化に新しい空気の投入は有効であるが、新卒については、多様な視点から既存の現場につぶされないように上手く配属していけるかという人事が重要になる。
人材の採用が現場に多くの刺激をもたらす。新人が現場に入ると、「現場ルール」を今あるものとして教えるが、指導者はここで「教える難しさ」に気付く。他社での経験者は、既存のルールを理解せず、自分なりのやり方をしてしまう場合もあり、新人はきちんと聞き、その通りに実行しようとするが先輩のように上手く行かない。そこで考え努力するという状況が現場に新たな改善の気付きを生み出していく。
組織上の上位職ほど、現場を作り上げてきた自負がある為、現場を変えるということに抵抗があり、現状変革を受け入れ難いという風土がある。職場活性化に新しい空気の投入は有効であるが、新卒については、多様な視点から既存の現場につぶされないように上手く配属していけるかという人事が重要になる。
6.改善サイクルと人事サイクル
改善活動では改善サイクルを定義しているが、現場の活性化には、人事をどのようにサイクル化していけるかということも、企業特性に合わせて構築しなくてはいけない。組織の柔軟性を生み出すには、幅広い人材の育成が必要であり、その育成の為には、多くの経験を積ませる必要がある。そして、その方法として、人事のローテーション化が考えられる。経営幹部候補及びリーダークラスには、1年、1.5年、2年と異なる環境で経験を積ませていくことが有効である。異動というのは勇気が要るが、変化を起こすには意図をもって変える方が、現場を活性化させ、狙いとする現場改善が飛躍的に進んで行くであろう。
企業の要は人事であり、既存戦力の最大限活用するために改善活動がある。企業の人材育成には、有用な人事サイクルを考え、その補足として教育体制を整え、配置転換を実施すべきと考える。
企業の要は人事であり、既存戦力の最大限活用するために改善活動がある。企業の人材育成には、有用な人事サイクルを考え、その補足として教育体制を整え、配置転換を実施すべきと考える。